Webを流れるお金の5W2H

<目的>

リーン・スタートアップでは、仮説を検証する際に“もっともリスクが高い要素”、“挑戦の要となる仮説”から検証せよとしている。
それは一般的にどういう仮説か?
それはやはり、「誰は、何に対して/どのような理由で/どのようなときに/どれくらい お金を出す」といった仮説だろう。それ以外の仮説を、どんなにうまく立て、学び、本当のユーザ増加につなげたところで、十分な収益を得られなければ事業は継続できない(※1)。
よって、本エントリーでは“挑戦の要となる仮説”を構成するであろう最重要パーツ(5W2H)をいくつかリストアップしてみる。
※1.裏を返せば、「exitは売却しか考えてない」というのであれば別のタイプの仮説が“挑戦の要”だと言える。

Who

有料ユーザ

フリーミアムモデルを採用するWebサービスであれば、有料ユーザがお金を払う主体となる。一番分かりやすいパターン。

広告出稿者

直接出稿者と契約する場合であれ、AdSenseなどの広告サービスを利用する場合であれ、元々のお金は広告出稿者から出ている。


上記二つは仮説の主体として適当で無い気がしてきた。本当の Who は下記のように具体的な人物像、特性ではないだろうか。

元パチンコ遊技者(あくまで、一例として)

現在絶頂を迎えているソーシャルゲームの原動力となったのは上記の人たちだという話がある。
これをもし仮説化するならば、「パチンコに月数万円使う人たちが(ゲームが出来るくらい高性能な)携帯電話を持ったら、そこで提供されるゲームに同程度の金額を使う」等だろうか。同時に、対抗仮説(?)として「パチンコに月数万円使うのは、遊戯の結果同程度以上の金銭を得られる場合が稀にあるからである」等が考えられる。
→そうか、対抗仮説か・・・。仮説検証のメソッドは『リーン・スタートアップ』にほとんど記述は無かったけど、ちゃんと学び直さないといけないなあ。
(追記)対抗仮説というより帰無仮説
※これら、斜線部分の記述は個人的な感想。以下同様。

Webサービス開発者・Webデザイナー

Webサービス開発者・Webデザイナーは新しいWebサービスへの関心が高く、アーリーアダプターとなる可能性が高いように思う。
→ただし、お金を払うかどうかは大いに疑問。そう考えると、収益に関する仮説は初期ステージでは検証困難あるいは不可ということもありえる。その場合、可能な限り早く仮説の検証をするためには、初期ステージでも稀にまぎれこむであろう(本来は)アーリー/レイトマジョリティーを識別するためのロジックを確立し、分離→比較検証をどれだけ精確にできるかにかかってると言える。


あと、仮説を定義するときは一つ(一種類のWho)だけでは不十分だと思われる。最初は、分かりやすさを重視して少なくすべきかと思っていたけど。
そして、対象がどのカテゴリ(アーリーアダプター/アーリーマジョリティ/レイトマジョリティー/ラガード)なのかは常に意識しておくべきだろう。

What

プロダクト・サービスそのもの

まあ、これは基本中の基本なので解説なしで。

特定の機能、容量等の制限撤廃

フリーミアムモデルのWebサービスでは「有料ユーザのみ、○○機能が利用可能」「無料ユーザは5GBまで保存可能」等の差別化を行って、有料契約のモチベーションとするのが常。
ソーシャルゲームにおける有料アイテムもこの類か。
これらは、個人的偏見として「マネタイズについての仮説をうまく定義できないチームが「逃げ」あるいは「格好つけ」として採用する」「かかるコストの割に収入は少ない」イメージだが、実際どうなんだろう?

Where

国・地域

ビジネス規模が全世界レベルの場合は当然、国・地域(実質的には文化や生活習慣?)毎の仮説が必要。
例えば、有料のビデオサービスは、有料のケーブルテレビが一般的なアメリカでは普及するかもしれないが、日本の一般視聴者に対しては厳しいかもしれない。

場所

Facebookは、今でこそ誰でも何処でも使っているサービスになっているが、その始まりはハーバード大学だったのは有名な話。
“小さく始める”にあたって地域・場所を限定するなら、どこをターゲットにするかというのは重要な要素となる。

When

タイミング

「写真を撮りたいと思ったとき」「感動する出来事があったとき」など、特定の行動・イベントが起こったタイミングというのは重要。特に、現代はモバイルの時代なので、アプリ/Webサービスは常にユーザとともにある状態。だから、それをいつ使うか?というのはとても重要。

日時

プロダクト・サービスの種類によっては特定の時期/時間帯にニーズが集中する場合がありうる。よって、仮説定義時に「○○の時期/時間帯は○○である」と適切な定義をしないと、誤った結論を道微意してしまう恐れがある。

ステージ

ハイプサイクルでいうところの黎明期-流行期-反動期-回復期-安定期、各ステージにおいて状況が異なる以上、別の仮説が必要になることは明らか。

Why

それが必要/欲しいから

一番シンプルで、まっとうな動機。
「ユーザの目的を達成するために、その機能/性能等が必須だから」「ユーザが、その機能/デザイン等を気に入ったから」というパターン。

買わずにはいられない

典型的な例は、ソーシャルゲームのガチャ。
最初にガチャを回す動機は「欲しい」という純粋な欲求だったかもしれないが、「ゲットするためにあと一枚のカードが必要(だが、なかなか出ない)」等の状況から「今さらやめられない・・・!(グニャア)」となるパターン。
こういうのは将来的に法律で規制されるリスクが大いにあるが、そこまで織り込み済みなら強い。

チャレンジに対する応援として

そのプロダクト/サービスが先進的であまり一般ウケしないものの場合、逆に、「俺はいいと思うぜ!」という気持ちを表明するために購入するということがある、かな?
これはあったとしても、きっと少数派。しかし、初期ステージを乗り切るための貴重な収入源として、検証すべき価値はあるんじゃないかと思う。

お布施として

上と似たものに、いわゆる「お布施」がある。これは結構侮れない。一番の成功例はApple。世の中には「Appleの新製品が出たら、まずは買う」というユーザが少なからずいる。
でも、これはスタートアップが検証すべき仮説の「パーツ」ではない。すでに成功した企業の構成要素だ。ということで、リストからは消しておく。

How

利用メディア

典型的な成長仮説では、ユーザがそのプロダクト・サービスを気に入ったときに他のユーザに紹介する。そのときにどのメディアを利用するかを仮説に組み込まないと、検証のためにどのデータを集めたら良いのか分からない。
→そういう意味で、“ただのアイデア”と“検証可能な仮説”を分けるのは適切な How & How much が盛り込めるかにかかっているんじゃないかとすら思う。

決済

決済手段・手順を適切にチョイスすれば成功の確率が高まるというより、むしろ、決済手順が煩雑だと潜在的な収益を逃してしまうという感じか。

How much

金額

いくらなら買うか?有料契約するか?
仮説的には「どんなに安くても有料会員にはならない」「多少高い値付けでも、気にせず買う」等のパターンもあるだろう。

コンバージョン率

「訪問者のうち何パーセントがユーザ登録をしてくれる」といった数値目標は仮説を定義する上で極めて重要・・・ですよね?

頻度

これはチームのレベルが低いときだけ意識すべきものかもしれないが、「こんなアプリがあったらユーザは面白いと思う」という類の仮説は、例え正しいと証明されたとしても『「なにこれwww マジウケる〜」→二度と使われない』のコンボが見え見えである。
よって最低限、「このアプリは非常に面白いので、違う友達に会う度に見せたくなる」程度の仮説でないと検証に値しないんじゃないかと個人的には考える。


極めて当たり前のことばかりを述べたつもり。
しかし、自分で仮説を定義するときはこれを見直して、検証のレベルを高めようと思う。